会長ご挨拶

 このたび、第45回日本看護科学学会学術集会を2025年12月6日(土)、7日(日)に新潟市 朱鷺メッセ 新潟コンベンションセンターにて開催する運びとなりました。新潟での日本看護科学学会学術集会の開催は、初めてのことであり、大変光栄に存じます。このような貴重な機会をいただけましたことに、本学会役員の皆様をはじめ、会員の皆様、関係者の皆様に心より感謝申し上げます。
 本学術集会のテーマは「看護科学と尊厳」とし、市民や患者の立場、保健医療福祉専門職者の立場から「尊厳」を看護科学の視座で探求することを目的としています。医療倫理の文脈において「尊厳」は、重要な指針として位置付けられていますが、その明確な定義は依然として確立されておらず、「尊厳学」の構築が進行中です。人工知能AI(Artificial Intelligence)の科学技術の急速な発展に伴い、人間と機械(ロボット等)、仮想と現実の境界において尊厳を問い直す動きもみられます。
 また、2003年のヒトゲノム解読完了から20年が経過した現在、日本の医療現場では遺伝子検査に基づく治療が保険収載されるようになり、遺伝医療は特別なものではなくなりました。その一方で、先天的な体質の改善・改良(エンハンスメント)に関する議論は十分に進んでいない状況です。このような科学技術の進展は、市民や患者に多くの選択肢を提供する一方で、意思決定における葛藤も生じさせる可能性もあります。
 こうした科学技術が人の在り方に影響を及ぼす転換点において、人の生活に関する看護実践を科学する私たち研究者・実践者に求められる役割とは何でしょうか。本学術集会では「尊厳」というテーマを軸に、領域を超えた参加者の皆様と活発な議論を展開する場を目指しています。
 学術集会の企画・運営においては、気持ちが高揚するような魅力あるプログラムの構成、参加者間のネットワークづくり、研究者間の活発な議論の場の提供を大切にしています。また、学術集会の要は、皆様から寄せられる演題です。多くの皆様からのご登録を心よりお待ちしております。かつて北前船が寄港した新潟の地で、多様な交流を楽しめることを心より願っております。企画・運営委員一同、参加者の皆様にとって知的好奇心を刺激する学術集会となるよう全力で準備を進めております。
 12月の新潟は、「トンネルを抜けると」手が届きそうな鈍色の雲が広がる季節です。新潟にお越しいただく皆様には、彩り豊かな服装で会場を華やかに盛り上げていただければ幸いです。また、信濃川と阿賀野川に育まれた越後平野の恵であるお米とお酒もぜひご堪能ください。本学術集会が皆様にとって良き思い出となりますよう、委員一同おもてなしの心を込めてお待ち申しあげております。

令和6年12月吉日


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