新潟口腔ケア研究会

新潟口腔ケア研究会
第12回 新潟口腔ケア研究会
 今年は、9月3日に第12回口腔ケア研究会が開催となりました。県外からの参加者も含め約200名の参加者が集まり、大変な盛り上がりを見せました。
 午前中は教育講演の講師であるナーシングホーム気の里の田中靖代先生によるスキルアップセミナー『口腔機能を引き出すスプーンテクニック』を開催しました。募集を開始して早々に定員の30名を超える申し込みがあり、口腔ケア・摂食嚥下の関心の高さを実感しました。セミナーは新潟県立看護大学の職員の方々がサポーターとなり、具体的な方法を提示しながら参加者の皆様は指導を受けておりました。日常業務の中で摂食嚥下時のポジショニングの重要性や通常の食事を一工夫することで、簡単に嚥下食に変化させられることを細やかにご指導頂きました。
 午後より第12回新潟口腔ケア研究会が開催されました。一般口演は8演題集まり、今年は病院での口腔ケアの取り組みや口腔ケアの難症例の報告などが目立ちました。
今年のテーマは「摂食嚥下」として、看護師の立場から摂食嚥下への取り組みをされている、スキルアップセミナーより引き続き、ナーシングホーム気の里の田中靖代先生より教育講演として「口腔機能を向上させる食事の形態とスプーンテクニック」をご講演頂きました。また、日本歯科大学口腔リハビリテーション多摩クリニック、日本歯科大学新潟病院訪問歯科口腔ケア科の戸原雄先生より特別講演として「いつまでも口から食べるために」をご講演頂きました。それぞれ、歯科医師と看護師の立場から、摂食嚥下の役割について明確に示されました。

抄録(田中先生)
 私は長年、「口からたべること」を求めて摂食訓練を行ってきた。当初は球麻痺や仮性球麻痺患者の摂食は困難でチューブ栄養が望ましいとされる時代で、看護の教科書や摂食嚥下のリハビリ学会もなかった。しかし、「食べたい患者」の支援は、排泄や睡眠などと同様に、暮らしを与る看護の避けて通れない課題である。私はまだ肯定されないケアに、模索と工夫を重ね、患者から多くの学びをいただいた。
 さて、人がものを「食べる」ためには、食物を口腔内へ取り込み、噛んでまとめて反射誘発部位と言われる咽頭まで送り込まれると、嚥下反射が惹起し、これによって食物は体内へ取り込まれることになる。つまり、この反射がないとどんなに立派な歯があっても食物は体内へ取り込むことができない。したがって、反射誘発部位まで食塊を移送する頬筋や口唇、舌の動きなど口腔機能を支える筋力が必要である。
 一方、私たちの施す摂食訓練は、患者の異常を補い、正常のメカニズムを助ける工夫である。例えば、口唇閉鎖ができない患者の場合は、鼻の下を伸ばすように引いて閉じ、また、舌の動きを引き出すには極少量の水を上唇に浸けた。さらに、食物を舌へ乗せ移すたびにスプーンで舌を刺激した。同様に「噛んでまとめる」は、訓練食の理想を破って刻み食を利用した「フランス料理風刻み食」と称する咀嚼嚥下食を開発し用いた。この食事は家族と同じものの一部を刻み、残りをペースト食にし、刻み量を段階的に増やしていくものである。刻み食は咀嚼運動を誘発し、舌や頬筋、口輪筋を強化し、食塊の口腔内残留や咽頭移送を効果的にするなど、口腔機能にも有益であった。


抄録(戸原先生)
 口から食べることは生命維持の方法として重要です。そしてそれ以上に人生の楽しみやコミュニケーションとして極めて重要な意味を持ちます。様々な疾患を持つ高齢者は全身の機能が低下するとともに食べる機能が低下した結果、口から食べ物を取る、水を飲むことが難しくなる場合があり、適切な対応を誤嚥性肺炎や窒息などの生命に係る問題を引き起こすことがあります。
 いつまでも口から食べるためには適切な摂食嚥下機能の評価と、評価に基づいた対応を行う必要があります。摂食嚥下機能の評価には内視鏡やレントゲン等を用いる精密検査と呼ばれる評価と、外部観察と呼ばれる評価がありますが、実際の食事場面を観察し、何を食べているか、どのように食べているかという状況を観察し、食べることの問題を抽出するという外部観察は非常に有益です。
 特に認知症等の指示の理解の低下を伴う摂食嚥下機能の低下の場合は機能訓練を行うことが極めて困難な場合が多々見られるため、食事形態の適正化、食具の工夫、姿勢調整などの食事環境の整備が極めて重要な意味を持ちます。そして、外部観察から得られた情報をもとに食事環境をどのように整備するかというプランを立案し、プランを継続していくためには、摂食嚥下に係る多職種のカンファレンスや継続した連携が必要となります。
 今回はいつまでも口から食べるためにどのような観点で外部観察から摂食機能を評価するか、そしてどのような対応を行うか、さらにどのように連携を行ったかをいくつかの症例を交えてお話しをさせていただきたいと考えております。そして皆様が今後、摂食嚥下機能が低下した方にどのように対応をするか、また多職種連携を行うことの有効性を考えることの一因となれば幸いです。


企業展示の様子 
口腔ケアに関連する4社を集め大変な盛況を見せておりました。



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