新潟口腔ケア研究会

新潟口腔ケア研究会
第13回 新潟口腔ケア研究会
 平成30年度は、9月2日に第13回新潟口腔ケア研究会が開催となりました。県外からの参加者も含め約200名の参加者が集まり、大変な盛り上がりを見せました。
 午前中はスキルアップセミナー『口腔機能低下症実技セミナー』を開催しました。募集を開始して早々に定員の20名を超える申し込みがあり、口腔低下症への関心の高さを実感しました。セミナーでは、参加者の皆様が実際に機器を使用しながら熱心に指導を受けておりました。
 午後より第13回新潟口腔ケア研究会が開催されました。一般口演は7演題集まり、今年は病院での口腔ケアや摂食嚥下障害に対する歯科介入症例の報告などが目立ちました。
今年は、歯科衛生士の立場から在宅歯科診療への取り組みをされている、米山歯科クリニックの鈴木里保先生より教育講演として「我々が行っている専門的口腔ケアと口腔リハビリテーション〜在宅へ繋げる診療室での役割〜」をご講演頂きました。また、同クリニックの米山武義先生より特別講演として「肺炎は口で止められた!―ある歯科医師の叫びー」をご講演頂きました。それぞれ、歯科医師と歯科衛生士の立場から、在宅診療における歯科医療の役割について明確に示されました。

抄録(鈴木先生)
 本来ならばこの場は、訪問診療において並々ならぬ熱意と温かい真心を持って、患者様に接している杉山総子歯科衛生士が立つべき場所であるところですが、この度は、たいへん微力ではございますが、私、鈴木がこの場を務めさせて頂くこととなりました。
 私は、米山歯科クリニックにおいて診療室を中心に、従来の歯科衛生士業務に加え、口腔機能の維持・向上に向けた取り組みを行っています。
診療室に来られる患者様といっても、ご高齢の方の数は年々増え、そのケースも多岐にわたっています。全身疾患のある方、車椅子の方、脳血管疾患の後遺症のある方、口の機能に問題を抱える方、認知症の方、時に介護度5の方も来院されることがあります。そのため診療室においても、高齢患者さんと関わる場合には幅広い知識と技術が求められ、時に一歩も二歩も踏み込んだ対応や配慮が必要となるばかりではなく、謙虚さと豊かな精神性も必要となってくると感じています。ですから、このような時代の要請に応えていくためにも、私達はもっと研鑽を積んでいかなければなりません。
 米山歯科クリニックでは、以前より診療室でも口腔機能に対するアプローチを行っています。それでも、あくまで一般的な歯科診療所ですので、現状としては必要な方に必要な事を、出来るときに出来る形で行わせて頂いております。口を通して関わっている患者様が、家でも毎日口の体操を頑張っていたり、少しでも成果が出て来たりすると嬉しいもので、何かもっと出来ることはないかという気にさせられます。
 この4月から、口腔機能低下症という病名が出来て、私達のように口の機能への取り組みを行っている歯科診療所にも追い風が吹いて来ました。これにより、今まで気になってはいたがあまり積極的なアプローチが出来なかった方々へも、もう少し踏み込んだ対応が出来るようになりました。本講演では、私達のこれまでの取り組みについてお話させて頂きます。少しでも、皆様のお役に立てれば幸いです。

抄録(米山先生)
縁があって以前NHKラジオ深夜便「心の時代」に声の出演をさせていただきました。「口は長寿(長生き)の門」というテーマでしたが在宅診療にかかわって、要介護者とその家族が必死で生きている姿を歯科医師の目線で伝えました。つたない話でしたが、これまで経験してきたことをできるだけ患者さんの立場に立って話しました。しかし放送後、すごい反響を頂きました。内容は次のようなものです。「脳血管障害をわずらい、口から食べられない夫に何とか一口でも食べられるようにさせてあげたい。」「肺炎で生死をさまよったことがあります、どうか効果的な口腔ケアを教えてください。」など等。口腔のことで多くの国民が深刻な悩みを抱えていることを知り、襟を正して、国民の健康と福祉に邁進すべきであることを教えられました。
看護教育の指導者であるヴァージニア・ヘンダーソンが、1960年、著書『看護の基本となるもの』のなかで「患者の口腔内の状態は看護ケアの質を最もよく表すもののひとつである」と記し、口腔という敏感で人間の尊厳に深くかかわる器官のケアの難しさと重要性を述べています。はたして我々自身、この認識ができているでしょうか。
近年、口腔健康管理(口腔ケア)は、歯科疾患の予防を目的としたものから、口腔のもつあらゆる働き(摂食、咀しゃく、嚥下、構音など)を健全に維持し、全身健康に寄与するものとして理解され、実践されています。歯科が長い間、医療の中枢から遠い位置に甘んじていたことは否めません。しかし近年、口腔管理(衛生、機能)が肺炎等の感染症の予防や生活習慣病予防に極めて重要な位置にあり、様々な疾病の回復に口腔管理が必須であることが数多くの研究から明らかになりました。私は近未来“口腔医療の時代”を迎えると固く信じております。本講演では日本人の死因の第3位である誤嚥性肺炎について「肺炎は口で止められた!」というテーマで皆様方と考えてみたいと思います。

企業展示の様子 
口腔ケアに関連する3社を集め大変な盛況を見せておりました。



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