新潟口腔ケア研究会

新潟口腔ケア研究会
第14回 新潟口腔ケア研究会 報告
 令和1年度は、7月28日に第14回新潟口腔ケア研究会が開催となりました。県外からの参加者も含め約150名の参加者が集まり、大変な盛り上がりを見せました。
 午前中はスキルアップセミナー『介護職向け口腔ケア実技セミナー』を開催しました。募集を開始して早々に定員の20名を超える申し込みがあり、介護現場における口腔ケアに対する関心の高さを感じました。セミナーでは、参加者の皆様が口腔ケアについて実践的な実技指導を熱心に受けておりました。
 午後より第14回新潟口腔ケア研究会が開催されました。一般口演は7演題集まり、今年は病院での口腔ケアや地域保健事業に対する歯科介入症例などが報告されました。
 今年は、「口腔機能について様々な視点から考える」をテーマに、言語聴覚士の視点から、国際医療福祉大学成田保健福祉学部言語聴覚学科の阿志賀大和先生より教育講演として「“意識”の視点から考える口腔機能」をご講演頂きました。また、生理学的な視点から、新潟大学医歯学系摂食環境制御学講座口腔生理学分野の山村健介先生より特別講演として「摂食嚥下と全身や脳との関係」をご講演頂きました。それぞれの立場から、摂食嚥下機能と全身や脳機能についてを基礎的な見解も含めて示されました。

抄録(阿志賀先生)
タイトルにある“意識”という言葉は様々な意味を有しています。つまり、「起きている状態・程度」、「注意を向ける」、「認知する」、「気を付ける」、「態度・関心の様子・程度」などです。そのため、本来であれば、それらの意味に合わせ語句を使い分けるべきではありますが、今回はそれらの意味について全て“意識”という言葉で表現することを予めご了承いただければと思います。
 さて、私たちは普段食事をするときに、食物を取り込む、咀嚼する、嚥下するという運動や行為を何気なく行っています。さらには、食事以外に意識が向いていたとしても−例えば、人と話をしながらでも、テレビを見ながらでも−前述のような運動をすることはできます。しかし、良く味わおうとするときや、魚の小骨を取り出そうとするときには見えない口腔内に意識を向けます。さらに、臨床の現場では「食べましょう」、「お口を開けてください」、「お野菜ですよ」、「よく噛んでください」などのように、摂食の動作やこれから食べる食物が何であるかを意識させるような声掛けを行うことが少なくありません。このように、口腔の運動・行為は意識することなく行うことが可能である一方で、意識して行うこともあります。それら両者の間には、どのような違いがあるのかを理解することは、日々の臨床を振り返り、どのようなことをこちらが意識すべきなのかを気づかせてくれるきっかけになると思います。そこで、私からは口腔機能のうち摂食嚥下機能を中心に、意識した時としない時の違いや摂食嚥下機能に影響する高次脳機能障害の症状についても触れながら、ご参加いただいた皆様と考える時間にしてまいりたいと考えております。

抄録(山村先生)
もし「なぜ口から食べる必要があるのですか」と問われたらあなたは何と答えますか?「食物から体内に栄養を摂取して、様々な身体の機能を維持する」というのが、生物学的な答えになろうかと思います。もし食べることの目的が栄養摂取だけであるならば、口で咀嚼して食物を取り込む代わりに、胃や血液に直接栄養を入れても同じはずです。実際これらは経管(経腸、頸静脈)栄養として、口から食べ物を取できない人の栄養摂取の方法として用いられています。しかし、ひとたび口から食べる機能が失われると、人は大きな喪失感を味わいます。このことは、口で咀嚼して食物を身体に取り込む摂食行動には、栄養摂取以外の意義があることを意味しています。
それを考える上でのヒントになるのが、摂食行動は「摂食行動は栄養摂取の過程では数少ない動物性機能」ということです。時間的な観点からみると、栄養摂取の全課程の中でほんのわずかを占めているに過ぎませんが、食欲という動機に始まり、食物を認知して口に運び、咀嚼して味わい、嚥下するという摂食行動には、咀嚼や嚥下運動の制御、咀嚼や嚥下に伴って生じる感覚の認知、情動や記憶のような精神活動などの動物機能が含まれています。この過程で自律神経系や内分泌系の活動も変化させます。これら自律神経系や内分泌系の活動も変化によって、血糖値やエネルギー代謝など自らの意志では制御できない上に、摂食行動の結果として得られる満足感と繋がる全身的な効果がもたらされます。
本講演では摂食嚥下の概要を説明した上で、摂食嚥下と全身や脳との関係、食物の経口摂取がもたらす効果を考えてみたいと思います。多職種連携によって行われる摂食嚥下のリハビリの場でなぜ経管栄養でなく経口摂取が重要なのかの説明、あるいはリハビリに挫けそうな患者さんへの励ましのお役に立てていただけると嬉しく思います。

企業展示の様子 
口腔ケアに関連する2社を集め、盛況を見せておりました。



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