新潟口腔ケア研究会

新潟口腔ケア研究会
第17回 新潟口腔ケア研究会 報告
 令和4年度の第17回新潟口腔ケア研究会も、新型コロナウイルス(COVID-19)感染がいまだ収束を見ず、2022年11月20日〜12月10日にWEB研修会としてオンデマンド配信での開催となりました。本年度も約140名とより多くの皆様にご視聴いただき、感謝申し上げます。
 本年は、当番世話人の新潟中央病院歯科口腔外科の鶴巻 浩先生のもと、「周術期口腔機能管理のUp To Date」をテーマといたしました。教育講演は、新潟大学大学院医歯学総合研究科顎顔面口腔外科学分野の冨原 圭先生より「がん治療における口腔機能管理の現状と展望」と題し、がん治療の前後や治療中の有害事象、口腔機能管理についてご講演頂きました。また、特別講演として、日本歯科大学新潟生命歯学部口腔外科学講座の田中 彰先生より「口腔バイオフィルム感染症と口腔ケア(口腔機能管理)を再考する」と題し、口腔バイオフィルム感染症の概念、評価、対策についてご講演頂きました。
抄録(冨原 圭)
 超高齢社会を迎えた我が国では、今後さらにがんの罹患数や死亡者数の増加が予想されます。しかし、がんと診断されても、医療の進歩によってその治療成績は飛躍的に向上しており、多くの患者さんがもとどおりの生活に復帰できる時代となってきました。そのため、がん治療においては、より質の高い療養生活や復帰後の健やかな生活の獲得も重要な課題です。
 しかし、がん化学療法や放射線療法による口腔内の有害事象や、骨吸収抑制剤などに起因した顎骨壊死などの有害事例の報告が予想以上に多いことから、その対策は喫緊の課題となっております。
 2012年に保険収載となった周術期口腔機能管理は、がん治療をはじめとしたさまざまな周術期における口腔機能管理の重要性を多職種で広く認識するきっかけとなり、その関心の高まりもあって、口腔機能管理はがん治療において欠かせない支持療法となりました。
 しかし、患者さんの口腔内の状況は千差万別であり、多くは基礎疾患を抱える有病者や高齢者であることから服用薬も多岐に渡り、がん治療における口腔機能管理を行う際には、これまで以上に、専門知識のみならず幅広い知識や現場での難しい判断が求められます。
 本講演では、がん治療における口腔機能管理をテーマに、がん治療の前後や治療中の歯性感染病巣の管理、化学療法や放射線療法による口腔粘膜炎などの有害事象、頭頸部放射線治療や造血器幹細胞移植における口腔機能管理についてお話ししたいと思います。
抄録(田中 彰)
 令和4 年度の歯科診療報酬改定において、口腔バイオフィルム感染症の診断を目的とする口腔細菌定量検査の評価が新設されました。口腔細菌定量分析装置が、正式に微生物定量分析装置として一般医療機器(特定保守管理医療機器)として認可され、施設基準を満たした施設において、在宅等療養患者や、脳性麻痺、知的発達障害など歯科治療に特別な配慮を要する患者に対し、検査費用の算定が可能となりました。バイオフィルムとは、微生物が歯や義歯などの固相表面に形成した集合体で、複数の微生物が、それぞれが生成する菌体外粘性多糖体を介して三次元構造を形成し、互いに影響を及ぼしながら、栄養源を交換し、時に特異的な生体に有害な代謝物質を産生するものとされています。これまで、デンタルプラークと言われてきたものと、ほぼ同義とされており、う蝕や歯周病も広義の口腔バイオフィルム感染症の一つと定義づけられています。さらに、このバイオフィルムは、抗菌薬などの薬剤への抵抗性を有し、免疫からも逃避することがわかっています。
 口腔ケア(口腔機能管理)は、単なるデンタルプラーク、歯石の除去から、バイオフィルムの存在を念頭に、細菌量とバイオフィルムの質を改善、維持することが重要な新展開を見せています。本講演では、口腔バイオフィルム感染症の概念、評価、対策について、口腔内常在菌、真菌、歯周病菌なども踏まえて解説する予定です。




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