新潟口腔ケア研究会

新潟口腔ケア研究会
第19回 新潟口腔ケア研究会 報告
 令和6年度の第19回新潟口腔ケア研究会は、現地および後日オンデマンド配信のハイブリッド開催となり、9月8日に現地開催、9月15日〜10月15日にオンデマンド配信しました。本年度も約160名とより多くの皆様にご視聴いただき、感謝申し上げます。
 本年は、当番世話人の日本歯科大学新潟生命歯学部 耳鼻咽喉科学 教授 佐藤雄一郎先生のもと、「今だからみんなで語ろう摂食・嚥下」をテーマといたしました。特別講演として、国立研究開発法人国立国際医療研究センター リハビリテーション科 医長 藤谷順子先生より「地域に帰るための病院でのリハビリテーション」と題し、摂食嚥下障害に対する臨床現場での対応を含め、在宅治療を見据えた病院でのリハビリテーションについてご講演頂きました。また、教育講演は、総合リハビリテーションセンターみどり病院 リハビリテーション部 言語聴覚療法部門 部長 堂井真理先生より「地域に根ざした食支援を求めて」と題し、シームレスな食のサポートにおける具体的な活動内容を踏まえ、食支援連携の重要性についてご講演頂きました。
特別講演 抄録(藤谷 順子)
 しばしば、リハビリテーションの分野では、急性期リハビリテーション⇒回復期リハビリテーション⇒地域・在宅、というような流れが提示される。しかし、実際に一般病院に勤務していると、そのような流れを経る典型的な脳卒中などの症例は一部である。脳卒中患者でも、転院せずに地域に戻るケースも少なくない。また、脳卒中以外の疾患でも摂食嚥下リハビリが必要とされるケースが増加している。例えば心不全の急性増悪などで入院した高齢者の多くが、摂食嚥下障害を悪化させたり、摂食嚥下障害が判明したりする。そのような、地域から入院してきて地域に帰したい患者の、律速条件となる摂食嚥下障害にいかに対応するか、というのはリハビリテーション部門にとって重要な課題である。
 食事というのは、多くの人にとっては、日常生活であり、嗜好であり、またその準備は家事でもあり、支出の項目でもある。習慣や、思い入れや、個性の出るところである。
 家族にとっても、食べることおよび歯磨きが「普通に」できなくなった患者に手を貸すことは、楽なことではない。もともとそのようなケアの専門家ではなく、知識もないのである。それに加え、「誤嚥性肺炎の要因」等のリスク説明をきくと、さらに気持ちの負担になる。
 いっぽう、一般の人が思うようには、病院は高齢者にとって「良い療養の場」ではなく、ご本人のリハビリテーション、身心の賦活には、在宅のほうが適している場合もある。そのためにも、早期退院は重要である。早期退院を実現するためには、家族や周囲の理解と支援が不可欠である。病院と在宅では環境が様々な点が異なる。病院でのリハビリテーションは、退院後の生活を見据え、在宅で実施可能なプランを立て、それを説明し、引き継いでいくことが重要である。
教育講演 抄録(堂井 真理) 
 近年、「食支援」は単に「摂食嚥下のリハビリ」だけではない、複雑で多様な問題を含み、その対応を求められることが多くなったと感じています。それは医療施設・介護施設・在宅や地域という様々なフィールドにおいて、医療の側面のみならず、介護力、地域資源、経済力、倫理的側面、そして社会の認識を含めた多様な観点を同時に解決することが求められるようになってきているからと考えられます。
さらに、この度の「診療報酬・介護報酬・障害福祉サービス等報酬のトリプル改定」では、ポスト2025を見据えた医療体制制度や病院機能の再編成、医療と介護の役割分担や医療・介護連携の強化が示されました。治療回復の強化と早期退院の加速化が求められる一方で、人材の不足による疲弊や、転帰先探しに難渋したり、シームレスな食のサポートを支える体制が不十分だったり、回復困難な終末期の方への対応、社会における認識の乏しさなど、様々な面で課題は山積しています。
 そのような背景から、私は言語聴覚士(ST)として、退院後の「生活」「地域」を想定してつなぐ「その人の生活とその先を考えるリハビリ」を意識して「医療⇔介護連携」、退院後の戻り先である「地域」につなぐ活動や、「食支援外来」「地域の食支援ネット」を立ち上げ、地域課題の把握や「食」を支える取り組みに携わってきました。
病気や障害を持っても、「病気や障害と共に暮らす」社会づくりを…また、自分らしく人生を生き抜くために、「治し、支え、関わる」地域づくりが重要と感じています。
 この教育講演では、当院の取り組みや活動について事例を挙げて紹介させていただき、皆様と一緒に「これからの食支援連携」について考える機会にしたいです。
企業展示の様子
ティーアンドケー株式会社より展示いただきました。



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