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| 第20回 新潟口腔ケア研究会 報告 |
令和7年度の第20回新潟口腔ケア研究会記念大会は、現地開催および後日のオンデマンド配信となり、2025年12月14日に現地開催、2026年2月12日〜3月31日にオンデマンド配信しました。本年度は約150名と多くの方に現地参加いただき、感謝申し上げます。
本年は、当番世話人の日本歯科大学新潟生命歯学部 口腔外科学講座 教授 田中彰先生のもと、「誤嚥性肺炎と口腔ケアを考える。」をテーマといたしました。2006年に発足した本研究会は、20回を迎えました。20年の時を経て、口腔ケアは、病院や施設、訪問診療の現場で当たり前のケアとして普及しつつありますが、最新の成人肺炎診療ガイドラインでは、いまだ、すべての施設で口腔ケアが普通に受療できるわけではない状況であるため、強く推奨とはできないと記載されています。口腔ケアのさらなる普及と発展を目指すために、今回は原点回帰として、誤嚥性肺炎対策をテーマとしました。そこで、特別講演は、口腔ケアのレジェンド、米山歯科クリニック 米山武義先生より「住み慣れた新潟で安心して人生を全うするために ─口腔を通して我々歯科ができること─」と題し、歯科訪問診療の永年のご経験を踏まえ、誤嚥性肺炎予防を含めた歯科治療の未来についてご講演頂きました。また、教育講演1は、長岡赤十字病院 呼吸器内科 沼田由夏先生より「成人肺炎診療ガイドラインをどういかすか?─誤嚥性肺炎治療の基本と実際─」と題し、ガイドラインの内容から実際の肺炎治療の流れを含め、誤嚥性肺炎の予防、治療についてご講演頂きました。教育講演2は、日本歯科大学新潟病院 訪問歯科口腔ケア科 吉岡裕雄先生より「感染防止の3原則から再考する ─実践的口腔ケアの新たな戦略─」と題し、誤嚥性肺炎の予防には、感染対策のみでなく、多職種が連携した総合的なアプローチの重要性についてご講演いただきました。
新潟口腔ケア研究会は、新たなフェイズに向かって、進んでまいりますので、今後ともご参加をお願い申し上げます。 |
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特別講演 抄録(米山 武義)
住み慣れた新潟で安心して人生を全うするために ─ 口腔を通して我々歯科ができること ─ |
近年の我が国の高齢化は急峻であり、保健・医療、福祉に関する問題や課題が噴出しています。一方、出生者数は減少し続け、統計を取り始めてはじめて70万人を割り込みました。すなわち高齢化だけでなく少子化という深刻な人口問題に直面しています。このように我が国はこれまで経験したことのない新たな段階としての超高齢社会に突入すると予想されます。実際、診療所に来院される患者さんの高齢化が確実に進んでいます。そして高齢化に伴い、多くの患者さんは複数の基礎疾患を有し多剤を服用、薬の影響によると思われる口腔乾燥や全顎にわたる歯肉の炎症、根面カリエスの問題を抱えています。ふと思うことは、この方々が通院できなくなったら、どのような口腔環境に変化していくのだろうかと。食生活はどのように変化していくのだろうかと。2025年の現時点においても要介護高齢者において劣悪な口腔環境にしばしば出会うことがあります。一方、90歳を迎え、長年にわたって定期的な歯周病管理のために歯科医院に通院されている方で健全な28本の歯と歯肉を維持している方が複数人現れています。口腔環境、口腔状態が国民の健康格差を生じさせているのではないかと真剣に考えるようになりました。
本講演では、40余年にわたる歯科訪問診療の経験から、医療全体における歯科の役割、歯科医療の本質について私見を交えて、お話をしたいと思います。とくに「地域の中で人生を全うするために」という見地から誤嚥性肺炎予防も含め口腔医療の未来を指向したいと考えます。 |
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教育講演 抄録(沼田 由夏)
成人肺炎診療ガイドラインをどういかすか? ─ 誤嚥性肺炎治療の基本と実際 ─ |
誤嚥性肺炎は「高齢者の宿命」なのでしょうか。
誤嚥性肺炎は単なる感染症ではなく、“食べる力”“話す力”“生きる力”と深く結びついた病態といえます。
高齢化の進行とともに、誤嚥性肺炎は医療・介護の現場で最も身近な感染症のひとつとなりました。急性期には治療のために入院が必要になることも多いですが、その経過を左右する鍵は、その方の元々の体の状態に加えて、実は「お口のケア」や「嚥下機能改善への支援」に他なりません。2024年に改訂された「成人肺炎診療ガイドライン」には、新たに誤嚥性肺炎の章が設けられ、関連したクリニカルクエスチョンについてのシステマティックレビューの結果が追加されました。最新のガイドラインを手がかりに、誤嚥性肺炎の治療と予防について考えます。
まず、肺炎の診断と治療の流れを、分かりやすく整理します。重症度の考え方、抗菌薬治療の基本、支持療法やクリニカルパスなど、急性期病院の医療現場での実際を共有します。そのうえで、誤嚥性肺炎が「感染症」であると同時に「生活機能の問題」でもあることを確認し、口腔衛生、嚥下評価と訓練、食事姿勢、食事形態、リハビリテーションなどの多面的支援がいかに再発予防に寄与するかを具体的な症例とともに紹介できればと考えています。気道や肺をいたわる生活環境を心がけ(禁煙、受動喫煙・粉塵暴露防止)、続発性細菌感染の引き金になるウイルス感染を予防し(ワクチン接種)、口から食べ、話し、笑うことを支えるチームの力(多職種連携での経口摂取支援、リハビリや口腔ケア)によって、その発症や再発をもっと防ぐことができるのではないかと期待したいところです。一方、長寿の賜物としての老嚥とその先の穏やかな旅立ちや終末期肺炎についても、ガイドラインを紐解きながら、皆さんと一緒に考える機会にできれば幸いです。 |
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教育講演 2 抄録(吉岡 裕雄)
感染防止の3原則から再考する ─ 実践的口腔ケアの新たな戦略 ─ |
誤嚥性肺炎の予防を、一般的な感染予防の3原則(感染源対策・感染経路対策・感受性患者対策)に当てはめてみると、口腔清掃、誤嚥予防、そして防御力・抵抗力の向上となるが、このアプローチには根本的に限界がある。
感染源対策としての口腔内細菌の滅菌は言うまでもなく不可能であり、感染経路対策としての高齢者の嚥下機能低下を完全に防ぐこともできない。嚥下機能の低下は、感受性患者対策としての栄養状態の改善を困難にし、結果として3原則のいずれも十分には満たされない状況が生じてしまっている。さらに問題は、入院により肺炎の原因菌は抗菌薬で排除されるが、多くの場合、一時的に禁食やベッド上安静が指示されてしまう事である。これは、生命維持に必要な処置である一方、患者の嚥下機能の廃用と生活自立度(ADL)の低下を不可避的に招くことになる。結果として、肺炎は治癒しても体力と機能が衰え、社会復帰がままならず、再入院を繰り返すケースが散見される。
この悪循環を断ち切り、高齢者の尊厳ある生活を守るためには、誤嚥性肺炎に対する管理方針の根本的な見直しが求められます。まずは、「多少誤嚥しても肺炎を発症させないこと」であると考える。つまり、感染予防の3原則の限界を認めつつ、特に感受性患者対策としての防御力・抵抗力の最大化に焦点を当てる必要がある。そして次に、「発症しても機能低下させないこと」である。入院中であっても、肺炎治療と並行して嚥下機能やADLを維持・向上させるための早期リハビリテーションを組み込むことが不可欠である。
つまり、誤嚥性肺炎の管理は単なる感染症対策ではなく、患者の生活機能の維持に焦点を当てた全人的なケアとして捉えるべきである。個々の患者の病態や生活背景に基づき、感染予防3原則の観点から複合的にアセスメントを行い、医療・介護・多職種の関わるすべての人々が同じ方向を向いて、初めて再発と機能低下の連鎖を断ち切ることができると考えられる。 |
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企業展示の様子
ティーアンドケー株式会社より展示いただきました。 |
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