新潟口腔ケア研究会

新潟口腔ケア研究会
4回 新潟口腔ケア研究会
 平成21年9月13日(日)に日本歯科大学新潟生命歯学部講堂にて第4回新潟口腔ケア研究会が開催されました。当日は新潟県内の介護福祉、看護、歯科関係者を中心に約250名の参加者があり、一般演題、教育講演、特別講演が行われました。会場には口腔ケア関連の製品、薬剤を取り扱う企業ブースが4社設置され、試供品の配布や、器具、薬剤の使用法や効果などの説明がありました。一般演題では新潟県の医療施設から6演題発表され、急性期病院での専門的口腔ケアによる口腔内環境の変化、周術期の口腔ケアの効果や、在宅訪問口腔ケア、介護保健施設での口腔ケアの取り組みについて発表・討議されました。教育講演、特別講演の内容は以下に示します。なお、第5回新潟口腔研究会は平成22年9月5日(日)に日本歯科大学新潟生命歯学部講堂で開催予定です。
教育講演
「人工呼吸器関連肺炎と口腔ケア」
 岸本裕充  兵庫医科大学歯科口腔外科学講座

 VAP(ventilator associated pneumonia)とは気管チューブ関連肺炎で、挿管チューブを介して口腔内細菌が肺に流入し発症し、菌量の増加、宿主免疫低下が関与し人工呼吸器期間が1日増加すればVAPは発症率が1%増加するといわれている。口腔内細菌はデンタルプラークとして存在し、バイオフィルムを形成し、歯の表層に表面に強固に付着し、さらに内部に薬剤が到達しにくいため、口腔ケアによる管理が必要である。
 しかし、時間・マンパワーの不足、技術的要因、患者リスクなどから敬遠される風潮がある。そのためVAP予防のため、1.カフ上吸引のできる気管チューブの導入する、2.吸引は汚染物の回収に必須であり、適切な吸引を行う、3.各体位の長所・短所を知る、4.バイオフィルムを除去する、5.口の潤いを保つこと、の5つのポイントをあげた。また、食道がん手術予定で術後にICU入室予定の患者に、術前に歯科医師、歯科衛生士が口腔内のデンタルプラークを完全に除去した場合(フリープラーク法)、日常の口腔ケアを行った場合(対照群)と比較して、術後の気管内挿管日数は2.3日(対照群3.3日)、ICU在室日数6.0日(対照群7.3日)、38.0°以上の発熱2.2日(対照群3.1日) 肺炎発症率8.7%(対照群20%)、MRSAの検出0%(対照群20%)であり術後感染症の予防に効果があった。
 術後の口腔ケアに関してもフリープラーク法を行うことにより、一度完全にデンタルプラークを除去すると、ICU入室後、口腔内のデンタルプラークの再付着を予防でき、歯科医師、歯科衛生士による専門的口腔ケアを行わなくても口腔内管理が比較的容易であり、歯科のない医療施設でも、術前に最寄りの歯科医院を受診することによってフリープラーク法を準用できる可能を示唆した。
特別講演
「介護保険施設における口腔ケア、摂食支援のとりくみ」
 菊谷 武  日本歯科大大学付属病院口腔介護リハビリテーションセンター

 「口のあいてくれない人の口腔ケア、食事支援ってどうするんですか?」と介護福祉士から相談を受けることが多いが、実際に術者の思い通りに開口させることは困難である。もともと人間には原始反射(吸啜反射、探索反射、咬反射)を備わっており、脳幹部(橋、延髄)に支配されている。成長とともに大脳皮質が発達してくると、離乳し、さらに前頭葉により原始反射が抑制され、「食べる」という機能が発達してきた。しかし、認知症・パーキンソン病など疾患に罹患すると、前頭葉による抑制が解放れるために再び原始反射が誘発されるfrontal release singがおこる。本来、咀嚼とは歯と口蓋、顎、舌、頬、口唇などの周囲組織の運動と、唾液が調和することによりなされること協調運動で、原始反射とは異なる。
 実際の介護福祉施設で、歯が残存しているにも関わらずうまく摂食・嚥下できない訴える介護者・家族の多くは、原始反射を咀嚼に置き換えている。咀嚼とは、1.下顎の上下運動、2.咀嚼側に片寄る回転運動、3.下顎の運動に合わせた舌の側方運動、4.咀嚼側の頬の内側への運動で、食形態を調整し、嚥下運動の準備をすることである。咀嚼運動と嚥下運動は一連の動作であるが、咀嚼と嚥下は同時にはできないといわれている。咀嚼による食形態の調整ができなければ、あとに行われる嚥下は不可能であり誤嚥を誘発する。よって、食事時の観察や嚥下内視鏡を行い、患者の咀嚼・嚥下能力を把握し、食環境整備(食形態の調整、食べ方の調整、姿勢など)を指導する必要があると述べた。



新潟口腔ケア研究会事務局
〒951-9580
新潟市中央区浜浦町1-8
日本歯科大学新潟病院
口腔外科内
TEL. 025-267-1500
(内線242)
FAX. 025-267-9061
oralcare@ngt.ndu.ac.jp
Copyright © 2007- 新潟口腔ケア研究会 All Rights Reserved.