新潟口腔ケア研究会

新潟口腔ケア研究会
5回 新潟口腔ケア研究会
 平成22年9月5日(日)に日本歯科大学新潟生命歯学部講堂にて第5回新潟口腔ケア研究会が開催されました。当日は新潟県内の医科、歯科、介護福祉看護、関係者を中心に約250名の参加者があり、一般演題、教育講演、特別講演が行われました。会場には口腔ケア関連の製品、薬剤を取り扱う企業ブースが6社設置され、試供品の配布や、器具、薬剤の使用法や効果などの説明がありました。一般演題では新潟県の医療施設から6演題発表され、急性期病院退院後の口腔ケアによる口腔内環境悪化の予防、癌治療中の口腔ケア、要介護者の口腔ケア、NSTチームの口腔ケアの取り組み、介護療養病棟による口腔機能維持について、透析患者の口腔ケアについて発表・討議されました。教育講演、特別講演の内容は以下に示します。なお、第6回新潟口腔研究会は平成23年9月4日(日)に日本歯科大学新潟生命歯学部講堂で開催予定です。

ケアの視点からの口腔ケア論 ─施設と地域、ケアチームを結ぶ─
      日本赤十字広島看護大学 基礎看護学 教授 迫田綾子先生
 超高齢化に向かっている現代社会では、摂食嚥下困難患者は増加傾向にあり、在宅療養者で口腔内状態に満足している患者は22%しかいないとされている(2002年、広島県)。
 そんな中、平成22年3月19日、厚生労働省はチーム医療の推進について「チーム医療とは多様な医療スタッフが、各々の高い専門性を前提に、目的と情報を共有し、業務を分担しつつも互いに連携し、患者の状況を的確に対応した医療を提供する。その結果として①疾病の早期発見・回復促進・重症化予防などの医療、生活の質の向上、②医療の効率化の向上による医療従事者の負担軽減、③医療の標準化・組織化を通じた医療安全の向上があげられる。」とし、日本全体がチーム医療を目指しているとされている。
 口腔ケアは浸透しているが、ケアの観点から①哲学/思想的レベル、②臨床的/技術レベル、③制度/政策的レベルの3つの場面で考えられ、口腔ケアをあり方を問い直した。口腔ケアの目的は誤嚥性肺炎の防止するだけではなく、その後どのような生活を営んでいきたいかを引き出すことであり、専門職は健康や生きることという「坂道」を、教育や環境へアプローチして緩やかにし登ることを助けることであると述べた。
しかし、課題も山積している。特に異業種間での見解が統一されておらず、ケア時のポジショニング等、EBMによる臨床技術の取得が必要である。
 口は生きることそのものであり、ケアは健康への気遣い、健康になること、自分の人生を良くすることとされ、幸せではないと健康にはなれないと述べた。

チームでする嚥下障害治療 特に耳鼻科医の役割
      福井済生会病院 耳鼻咽喉科・頸部外科 主任部長 津田豪太先生
 嚥下障害には色々な要因があり症例ごとに部位も程度も予後も様々で、ワンパターンな対応では困難である。そのことから多種の職種の協力が必要であり専門的なチーム医療が必要であるが、必要なスタッフが揃っている施設は数少ない。その限られた条件の中で福井済生会病院で行ってきたこと、①嚥下チームに欲しいスタッフ、②チームの中で耳鼻科の役割、③NSTと嚥下チームのかかわり、④福井済生会の嚥下チームの役割、⑤チーム医療をすすめるこつ、について述べた。
 基礎疾患を有している患者について多種の薬剤を服用していることが多く、嚥下機能を傷害する副作用を有する薬剤がある。また嚥下障害を改善する薬剤もあり、薬剤師、主治医と確認して変更などを行うことが必要である。
 また嚥下チームで医師、歯科医師に望まれることは嚥下機能の重症度、代謝機能、原疾患の予後、危険の抽出を評価し、治療計画の立案を行い、危険管理を行うことである。嚥下訓練を行い、誤嚥すると誤嚥性肺炎につながり絶対的責任者が存在しないと誰も嚥下治療を希望するスタッフはいない。耳鼻科医の役割は嚥下内視鏡検査などを行い、嚥下運動を的確に把握し、その状態により①嚥下機能を回復させる、②代償法の提案、③外科的治療、④他方法の検討を行ない、各スタッフに指示することである。 
 チーム医療をすすめるコツとして、簡単な症例から始め、必要な職種に内容を説明し分担し、リスクを理解し自由さを保ち、明確なゴールを設定し、栄養手段の必要を考えることであると述べた。



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