会長挨拶

 この度、第34回日本微小脳神経外科解剖研究会を、2020年4月18日に新潟におきまして開催させて頂きますこととなりました。本邦における脳神経外科微小解剖学の発展を担ってまいりました本研究会を担当させて頂きますことを、大変光栄に存じております。
 脳神経外科手術は、70年代前半に手術顕微鏡が導入され、脳・神経や血管などの微細組織をより丁寧に扱うようになり、大きな変貌を遂げました。必然的に脳の局所微小解剖に関する造詣が深められ、新しい術式が次々と確立されて行き、現在では顕微鏡手術を前提とした局所解剖学は概ね完成の域に到達しているかのように見受けられます。一方で近年の脳神経外科分野では技術革新が目覚ましく、血管性病変に対してはマイクロカテーテルを用いた血管内治療が、脳室内病変には脳内視鏡、頭蓋底病変に対しても硬性鏡支援下での手術治療が脚光を浴びており、さらには4K画質の外視鏡の登場など、顕微鏡時代とは異なる手術支援機器の開拓が進んでまいりました。またコンピューター画像を駆使した解剖情報の習熟により症例個々におけるバリエーションの大切さに関しても再考されています。このように手術にまつわるテクノロジーの進化は、私たちに必要な解剖学にも当然変化をもたらし、従来と違った角度から見た局所解剖が求められるようになって来ており、局所解剖における本来普遍的な幾何学構造、つまり「ジオメトリー」をより多面的に理解しなくてはいけない時代となって来たことが実感されます。しかしながら、専門性が高度に分化していることにより、それぞれに必要な解剖学が独自に発展を遂げていることも否めません。
 本会におきましては、このように、従来からの脳神経外科局所解剖と各サブスペシャリティ分野でそれぞれ発展した局所解剖を横断的に融合し、現代の脳神経外科に必要な局所微小解剖のジオメトリーを多面的に捉える試みをしたいと考えています。熟練脳外科医レベルにはサブスペシャリティの枠を超えた新鮮な解剖学を、また専門医受験レベルにはこれから必須となる活きた解剖学を学ぶ機会となるよう、教育セッションを中心としたプログラムを構成したいと考えております。従来通り,解剖に関する新知見や手術の工夫に関する一般口演のセッションも設ける予定です。春の新潟へ、皆様の積極的なご参加をお待ち申し上げております。

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