ごあいさつ

 この度、第13回日本運動器疼痛学会の大会長を拝命し、身に余る光栄に存じます。私は本学会の前身であります「整形外科痛みを語る会」の創設当初から、本学会の前理事長牛田享宏先生にお声がけいただき、加わらせていただいております。創設当時、整形外科疾患で最も多い主訴であります「痛み」そのものに対する研究が進んでいない現状があり、志ある整形外科医が集まり、2004年6 月に整形外科痛みを語る会が設立されました。その会が発展し、2008年12月6日に福島県立医科大学理事長兼学長であられました菊地臣一先生が会長のもと、第1回運動器疼痛研究会が開催されました。そして、第4回からは日本運動器疼痛学会と改名し学会となり、さらに2015年の第7回からは一般社団法人化し、現在に至っています。
 今回の学会のテーマを「慢性疼痛に対するリハビリテーション診療の真髄 ―こころとからだケアの融合―」と致しました。現在、慢性疼痛治療ガイドラインでは「運動療法は強く推奨される治療」とされています。本来の「リハビリテーション(rehabilitation)」の語源は「re-:ふたたび」+「habilis:ふさわしい」+「ation:〜すること」とされ、また「真髄」を広辞苑で調べますと「物事の本質」、「その道の奥義」となっています。慢性疼痛患者では長引く痛みのため、社会参加(仕事、学業、地域活動等)が出来なくなることや、以前に楽しんでいた趣味ができないなどのQOLの低下、さらに国全体として医療経済的な事を含め、深刻な社会問題になっています。これらを念頭に患者がそれぞれにふさわしい人生を取り戻すことを目指す、リハビリテーション診療の真髄を是非とも、この学会で議論していただきたいと存じます。また、「こころとからだケアの融合」という副題も付けさせていただきました。慢性疼痛治療の中では運動療法に加え、心理療法もエビデンスレベルの高い治療となっていますが、日本ではそれを行うシステムやツールが明確には確立しておりません。私達の開発した「いきいきリハビリノート」は認知行動療法理論に基づいた運動促進法を行うためのツールであり、2014年から、厚生労働省の慢性の痛み研究班(牛田享宏班)の支援を3年間受け、本学会の役員の先生方のご協力をいただき、すすめてまいりました。本ノートは現在第5版、その使用方法等を記載した医療者用マニュアルは第4版まで改訂され、講習会での配布数も含め、全国の各医療機関等に5300冊あまりを配布してきました。本法の普及のため、いきいきリハビリノート講習会を本学会で6回、他の学会等で5回の計11回開催し、約900名の医療者の方々に参加していただきました。現在本学会のホームページのトップ画面に本法のねらい、使用方法の概略・購入方法、新潟大学医歯学総合病院リハビリテーション科での成績、さらには本ノートを使用しての診療が可能な15の医療機関をお示ししています。本法を含め、現在の運動療法および心理療法(心理的サポートを含めて)を行う医療スタッフがどのように両治療を融合させて行うか等を議論していただきたくシンポジウム等も企画予定です。
 特別講演1として、私が大学院時代に一酸化窒素の疼痛メカニズムに関して、3年半に渡り、ご指導いただいた新潟大学脳研究所名誉教授の澁木克栄先生より「慢性痛は何のためにあるのか?」のご講演をお願いしております。また、特別講演2として、日本リハビリテーション医学会の副理事長であられます和歌山県立医科大学リハビリテーション医学講座教授の田島文博先生に「疼痛に対するリハビリテーション医学のチャレンジ」と題し、まさにリハビリテーション診療の真髄をお話しいただけるものと楽しみにしております。特別講演3として、整形外科関連学会で疼痛関連の研究・診療、さらに本学会の創設以来、ご尽力いただいております札幌医科大学整形外科学講座教授の山下敏彦先生に「脊髄障害性疼痛と神経再生医療」のご講演を賜ります。その他、本学会の特色として、慢性疼痛患者自身に登壇いただき、その当時の心の内をお話しいただく、特別企画「患者はその時何を考えていたか?」や疼痛に関連したワークショップ、いきいきリハビリノート講習会、各分野でのプロにお話しいただく「真髄セミナー」、各種シンポジウム等も企画しております。
 加えて、11月下旬の新潟は食や観光を満喫できる季節でもあります。新潟の酒は80以上の蔵元を有しており、種類も豊富です。お米も美味しく、特に寿司ネタでは南蛮海老(甘エビの新潟での呼び名)やノドグロ(白身のトロともいわれる人気の高級魚)等なども美味しい季節です。観光では佐渡の金山・トキ保護センター、弥彦山・弥彦神社、棚田(十日町市)、縄文式火焔土器(十日町、津南)、夕日の沈む日本海、温泉(月岡・瀬波・弥彦温泉・・)などがおすすめです。学会と共に、新潟の素晴らしさを味わう機会にもしていただければ幸甚に存じます。皆様の来県を心より、お待ちしております。

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